フィールドでの記録はテキストとビジュアルの両方で

フィールド調査では、フィールドノートと呼ばれるノートに記録をします。

フィールドで対面式のリサーチの強みは、観察で発話者の表情や話しのテンポまで直接知ることができる点です。オンラインや郵送のアンケートでは、書き込まれた内容が全てなので、どのような服装の人が、どのような表情や間で答えたのかを知ることは難しいでしょう。自宅、職場、店舗訪問でインタビューを行う際、そこには気づきを得るためのヒントがあふれています。では、実際には、何を観察し記録しておくべきでしょうか。

観察の究極の目的は、その人の本音を読み解くための根拠を探すことです。 リサーチの対象者が、初対面のインタビューで本音を語ってくれるとは限りません。

たとえば、理想のリビングについて自宅訪問のリサーチを行った時のことです。「シンプル」な空間、という発言が複数の方から出てきました。シンプルな空間というと、我々プロジェクトメンバーからすると、無印良品のような機能美で煩雑でないイメージかなと思っていました。

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しかし、実際のお宅はその逆で物が多くちらかった状態で、シンプルとの言葉とのギャップに驚いたものです。それぞれが自分のシンプルさの定義を持っているため、言葉だけのイメージに頼るのは誤解の元になります。ちなみに、そのシンプルの意味は、自分のほしいものの在りかが簡単にわかって手が届く、ということでした。

ギャップを感じたことは、その場ですぐに追加の質問をして理解を深めます。そして、その言葉が指す内容を写真でも抑えておくことが大切です。現場にいないプロジェクトメンバーに、言葉と実際のギャップを視覚的に共有するのに役立ちます。

学術的なエスノグラフィーでは、あるがままの状態を見るために先入観を持たないようにということも大切だとされていますが、時間が限られるビジネスの場合は、現場に入ったときに、何を撮っておくべきかは仮説を持ち最低限リストにしておくとよいと思います。もちろん、リスト以外でも意外な発見はどんどん記録していきます。

 

フィールドで記録する対象の一例

  • 基本情報

-町並み/対象者ポートレイト/住居空間/家電・家具

-その他アーティファクト(レシート、家計簿etc)

  • 個性を表すもの

-ファッション、所持品(時計、携帯、カバン、乗り物など)

-家の中にある創意工夫

  • 態度や表情

-発言内容とのギャップの発見

-非言語情報:声トーン、表情、ボディランゲージ

-感情:ストレスに感じている/気分が高揚するなど喜怒哀楽